• 予告編
  • ショート予告
  • TV SPOT 15秒

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で世界中を熱狂の渦に巻き込んだ鬼才ジョージ・ミラー最新作が遂に日本上陸! 3000年もの間、 幽閉されていた孤独な魔人と、見果てぬ夢を追い求める女性学者とが織りなす、時空を超えた魂の旅の物語。イスラムの説話集 「アラビアンナイト」をモチーフに、圧倒的な造形美と絢爛たる色彩美のアラベスクは、愛の神秘、狂気と欲望の世界へと観る者を誘う―。


古今東西の物語や神話を研究するナラトロジー=物語論の専門家アリシアは、 講演のためトルコのイスタンブールを訪れた。 バザールで美しいガラス瓶を買い、ホテルの部屋に戻ると、中から突然巨大な魔人〈ジン〉が現れた。 意外にも紳士的で女性との会話が大好きという魔人は、 瓶から出してくれたお礼に「3つの願い」を叶えようと申し出る。 そうすれば呪いが解けて自分も自由の身になれるのだ。 だが物語の専門家アリシアは、その誘いに疑念を抱く。 願い事の物語はどれも危険でハッピーエンドがないことを知っていたのだ。 魔人は彼女の考えを変えさせようと、 紀元前からの3000年に及ぶ自身の物語を語り始める。 そしてアリシアは、魔人も、さらに自らをも驚かせることになる、 ある願い事をするのだった……。


【敬称略・順不同】



【敬称略・順不同】



小島秀夫 僕はミラー監督の大ファンで、今の僕があるのは監督のおかげなんです。ミラー監督の小瓶に囚われて40年以上。ある意味、僕も魔人(ジン)ですね。『アラビアンナイト 三千年の願い』はおとぎ話でもあり神話でもある。それを科学的、数学的に読み解いた大人の知的な映画という感想を持ちました。これは“物語”にまつわるお話で、“物語”が入れ子になっているわけです。

アリシアは物語論の研究者ですが、自分の物語は、うまく他者に綴れない孤独な人。彼女が魔人に会って、彼の3000年に亘る物語を聞く。語り部と聞き手の関係ですよね。そんななかで、自らも自分の物語を語り出していきます。この映画がすごいのは、舞台の半分がホテルの一室なんです。まさに小瓶の中。そこでふたりの物語が語られ、聞き手だったアリシアが、観客の僕らに、ひとつの物語を語り伝えていく。映画の構造的にレイヤーになっていて、すごく知的、哲学的な印象を受けました。 

“物語”の他にもうひとつ、“願い事”というテーマがあります。魔人は他人の“願い事”を3つ叶えることで自由の身になれるというルールですよね。“願い事”とは欲望でもあって、さらには叶えてもらう、叶えてほしい、両者があって初めて成立する。これはまさに恋愛のことなので、ミラー監督が知的に絶妙なところを指摘していると思いました。“願い事”とは、互いに押し付け合うという約束事自体が呪縛であって、最後はそこから解放されるという新しい展開なんですよね。この物語は、約束を振り切って、解体して、解放されるふたりの物語。つまり、小瓶を破壊して、外に出た話ということなんです。さすが、私の“神”が作った映画だと思いました。

ジョージ・ミラー ありがとうございます。私がこの物語を綴りたいと思ったのは、パラドックス、逆説がある物語だったということです。小島監督がおっしゃったように、ホテルの一室という限られた空間で、物語は進む。その一方で、魔人はある意味、タイムレス、そしてスペースレスな存在でもあるわけです。そこにまずひとつの逆説がある。また、魔人は不死の存在ですが、アリシアは命ある人間である。こういう対比が面白いと思ったのです。さらに、アリシアのように今の生活に満足し何も望まないという人物と、3000年に亘って何かを望み続けていた魔人のような者もいるということ。尺が短い映画ではありますが、私が興味を引かれたすべての逆説をそこに入れ込みたいと考えました。

私が今日お伝えしたいのは、小島監督は素晴らしいクリエイターだ、ということに尽きます。「DEATH STRANDING 2 (Working Title)」(小島氏の新作)のトレーラーを拝見し、これまでの作品と同様に強くパワフルな感情が喚起されました。表層的ではないんですよね。サブテキスト、画が本当に奥深く詩的であると感じています。それが小島監督らしさだと思うし、一見ではわからない、様々な側面が複数にあるところ、それらによって巨匠の手の中にいながら作品を体験できているのだと感じます。こういう作品を創り続けるためには、様々なスキルが同時に必要になる。それを全てコントロールしながら最終的に細かいディテールまでつめて、仕上げていらっしゃる。本当に広範な、そして奥深いスキルを持っていないと達成できないことなので、毎回作品に触れるたびに巨匠の手の中にいるんだなと感じるわけです。

小島秀夫 ありがとうございます。今夜は眠れない(笑)。

ジョージ・ミラー 小島監督の作品には、最高レベルのアートがすべきことが、まさになされているという印象を抱きます。コミュニケーションという努力、人間が何かを伝えようとするその努力というものが最適なレベルでなされている。そのため、人類レベルで響くものがあるのだと私は思っています。体感的にも感情的にも知的にも、すべてのレベルにおいて響いてくるんです。つまり、小島監督の作品は神話的なレベルで人々に響くものがあり、影響を与えることができる。それは我々ユーザーや観客にとってはすごくパワフルな体験となり、本当に感謝したくなります。

小島秀夫 ありがとうございます。今のお言葉で3000年くらい生きていけます(笑)。

ジョージ・ミラー どうしても聞きたいんだけどいいかな。小島監督のパワフルなアイデアはどんなときに浮かんでくることが多いんですか。ジョージ・ルーカス監督はシャワーを浴びているときだと(笑)。おそらくシャワーの時間というのはマインドが解放されているからかな。また、ドライブや散歩というのも、仕事とは関連付いていない行動だから、かえって脳の中で煮えたぎっていたものが表出してくるのかなと思います。半分夢のような状態と言いますか。

小島秀夫 僕は心と魂が分離しているというか、ずっと夢想している状態なんですよ。24時間、睡眠中も夢の中でも夢想をしているので、アイデアに困ることはないですね。たとえば、歩いているときなど、一定のリズムで体と心の鼓動がひとつになったような瞬間は良いアイデアが出やすい気がします。普段の生活の中で自然とアイデアが出てくるというか。なので、実生活ではとんでもない人間だと言われることもありますけどね、会話している時も人の話を聞いてないので。今は聞いていますけど(笑)。

ジョージ・ミラー すごくわかります(笑)。

小島秀夫 作品を創るうえでこだわっていることは、ストーリーテリングというか、物語、世界観、キャラクター、ディテールなどいろいろあると思うんですけど、僕の場合は右脳で直感的、哲学的に、文系の脳で考えます。一方で、左脳でかなり緻密に理屈をこねて組み立てる作業を同時並行的にやっているんです。意識はしてないんですが。あるアイデアがあって、それを右脳で直感的に考えつつ左脳では科学的、数学的に解析している。それを最終的にひとつにまとめて出力している。ミラー監督も同じではないでしょうか。

ジョージ・ミラー よくわかります。クリエイティブなプロセスというのは、知性というものに燃料を与え、一方で直感が知性というものを導いてくれる。これの無限ループなのだと思います。クリエイティブな作業は音楽的なものであれ、アートであれ科学であれ、きっとこういう仕組みなんじゃないかな。だから小島監督に同感です。それに加えて、私がいつも気をつけていること、考えていることは、……→全文は劇場販売パンフレットをご覧ください。(上映劇場はコチラ